前回の記事で、コンサルティングとは何かについて述べた。
今回はコンサルティングのなかでもITコンサルティング、特にSI寄りのITコンサルティングのビジネス構造について述べよう。
一般的なお話
一般的にビジネスの構造は売上、費用、利益の3構造で成り立つ。
売上-費用=利益といった具合に。
費用は固定費と変動費に分類される。
固定費はかかればかかるほど利益のブレが大きく、逆に固定費が少なければ利益のブレは小さい性格を持つ。
また、固定費がかかればかかるほど新規参入が難しい性格を持つ。
鉄鋼業や電機メーカーなどは多額の設備投資がかかるため固定費が非常に高い。
変動費はあまりかからないため、損益分岐点を超えれば大幅に利益を得られる性格を持つ。
しかし損益分岐点のハードル自体が非常に高いため、赤字になるリスクが高く、参入障壁が非常に高い。
一方で商社や卸業等は設備投資は不要なため固定費はあまりかからないが、商品の仕入などの変動費がかかる。
そのため、赤字になるリスクは低いものの、利益もその分小さい。
そして新規参入も比較的しやすいといえる。
SI業界のビジネス構造について
ではSI業界はどのようなビジネス構造なのか。
固定費は自社の管理部門の人件費と自社オフィスの管理代と宣伝費のみである。
自社オフィスは管理部門や自社の待機要員のためだけに用意すれば良いので、他の業種と比べれば非常に小さいと見て良い。
宣伝費については後述(※)。
問題は変動費である。
変動費は自社の開発要員やマネジメント要員の人件費のほかに、協力会社と呼ばれる下請け業者に依頼する外注費がかかる。
この外注費にマジックがある。
自社と外注に明確な業務の切り分けがある場合はよいが、SI業界は往々にしてそこがグレーなのである。
例えば元請がA社であり、セキュリティについてはB社に依頼、HWについてはC社、NWについてはD社などに依頼だったら話はわかりやすい。
しかし、実際はこのようにわかりやすく分担はされていない。
元請がA社とすると、B社はA社の開発面のサポート、C社はA社の全般的なサポート、D社はA社のプロジェクト管理・・・
といった具合に仕事の内容が曖昧なのである。
そうなると、B社、C社、D社の存在意義はいかにA社の社員よりも安く人件費を抑えるかに注力される。
A社では調達できない、より安価な労働力をB社・C社・D社に求めるのである。
そしてB社・C社・D社も同様に自社で完全に労働力を調達することは困難であり、彼らも別ベンダーにより安価な労働力を調達する。
こうして多重下請け構造が完成する。
では元請であるA社の価値とはなんであろうか。
それは先ほど述べた宣伝費(※)にある。
A社のブランド・会社名バリューこそA社の最大の価値である。
SI業界は製品や設備投資が不要である。そのために参入障壁が小さくなってしまう。
それをブランド・会社名によって差別化しているのがこの業界である。
宣伝費は何もテレビや新聞の広告費だけではない。
人脈をつけるための交際費や実績を提示するための管理・営業費用なども含む。
結論としては、
SI業界の大きな費用は、ブランドを維持するための固定費、自社の人件費および下請業者のための変動費である。
不思議な業界だと思いませんか?